
ソルジャー 魂の銃弾
原題 Shoot through
the hart
1998年 アメリカ
監督:デイヴィッド・アトウッド
脚本:ガイ・ヒバート
出演:ライナス・ローチ
ヴァンサン・ペレーズ
TV映画 日本未公開 ビデオあり DVD無し
ネタバレあらすじ
1992年、サラエボ。ムスリムのビジネスマン、ブラド(ライナス・ローチ)とセルビア人のスコブチ(ヴァンサン・ペレーズ)は競技射撃チームの仲間で親友同士。共にバルセロナオリンピックを目指していましたが、ユーゴスラビアの政情不安で出場できず。それでもオリンピックを見に行こうと、二人と家族+セルビア人医師ミーシャ(ただし夫人と子供はムスリム)とスペインへと旅立つのでした。ところが、セルビア人勢力が独立を図り、封鎖線で市内に追い返されてしまいました。
事態は悪化して行き、スコブチには射撃教官としてセルビア軍に徴兵されて行きます。内戦勃発となれば、セルビア人の勢力範囲の中でセルビア、クロアチア、ムスリムの全てが住むサラエボが修羅場になるのは目に見えている。内戦の勃発を確信したスコブチは、ブラド一家を脱出させようと航空券を手配するのでした。ところが、ブラドとその家族は状況が全く飲み込めていなかった。
「ここはユーゴスラビアだ!難民なんてソマリアの話だ!」「戦争になれば、アメリカ軍が来るさ」「国連が調停するさ」など、とにかく楽観的です。
「逃げれば全てを失う、祖国もだ。」
なお、ミーシャは医師なので身分が保障される(まあ、この辺は確かに文明国)のでパスです。
しかし、ブラドの家で爆弾テロが発生!ここに至ってようやく事態の深刻さを理解したブラドは、急いで脱出しようとするのですが、ちと遅かった。セルビア軍の攻撃で空港は閉鎖・・・。包囲されたムスリム地区では密輸組織のボス(なんとなく松本幸四郎似)を中心に民兵軍が組織され、家族を守るため、ブラドもそれに加わるのでした。
そうこうしているうちに、セルビア軍はサラエボ市内に狙撃兵を送り込んで無差別攻撃に出ます。スコブチは、最後のチャンスと、ブラド一家が検問を通過できるように取り計らったので、家族を逃がそうとするブラドですが、今度はブラドの妻が、
「スコブチの罠よ!あなたを置いていけないわ!」
とか言い出します。一度生じた民族間の亀裂はどうしようもなかった。
「過去の報いだ!」
と、50年前のゴタゴタを持ち出して妙なことを口走るセルビア人達とどっこいどっこいです。
しかし、ミーシャの娘が狙撃で殺されると、
「あなたの状況判断が甘かったのよ!」
「なにを!あの時逃げろって言ったじゃないか!」
泥試合です。
ムスリムの同胞を守るため、日夜戦い続けているにもかかわらず、理不尽にも家族の総スカンを食ったブラドは、一人、包囲された街に残るのでした。
一方、市民達はブラド達民兵の目の前でバタバタと狙撃兵に殺されて行く。苦労してブラドは、狙撃兵の隠れ家を見つけ出し、待ち伏せるのですが、スコープの中には親友スコブチの姿が・・・・・・。
解説
ユーゴスラビア戦争を描いた名作。狙撃兵に市民が次々と射殺されるサラエボ市の惨状は、「スナイパーストリート」として世界に報道されましたが、そのサラエボ市内の戦闘を描いた作品です。
カラジッチ党首がヒトラー張りの悪役として、これでもかとテレビニュースに登場し、セルビア側を一方的に悪とする姿勢がちょっと気に入りませんが。友情が民族対立に引き裂かれていく様子が上手く描かれています。序でに、包囲されたサラエボ市内でどこから武器が湧いて出てきたのかも疑問が氷解しました。スコブチがセルビア民族主義に染まっていく過程は省略されているのですが、民族対立が激化した途端、ブラド一家を守ろうとするスコブチに対して、セルビア人だから、といきなり不信感をあらわにするブラドの妻が良いです。日本には今も、「民族自決の原則に従って満州を独立させろ」とバカなことを言う人がいます。満州に独立運動など全く存在しないにも関わらず。民族自決も結構なことですが、平和に共存していた民族を引き裂いてまで追及する価値があるのかどうか、よく考えて発言するべきでしょう。
余談ながら、これがアメリカのTV映画なので「内戦を経験した事の無いアメリカにユーゴ問題を語る資格は無い」という批評をしていた人がいました。恥ずかしい人ですね。アメリカが近代史上三番目に大きな内戦を経験していて、今もそのトラウマから完全に回復していない事を知らないようです。